ドッグ・イート・ドッグ

6月17日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

ニコラス・ケイジが挑む 超ハードボイルド&極バイオレンスの世界

第69回カンヌ国際映画祭「監督週間」出品作品

 長年の刑務所勤めを終え、シャバに出てきたトロイは、ムショ仲間だったコカイン中毒のマット・ドッグ、巨漢のディーゼルと再会。お先真っ暗な人生とサヨナラしたい3人は、イカれた地元ギャングの首領から、ある仕事の依頼を受ける――それは借金を返済しない男の赤ん坊を誘拐すること。一見、簡単に見えた報酬75万ドルの大仕事だったが、事態は最悪な展開を招き、3人は追われる身になってしまう…。
 オハイオ州・クリーブランドの裏社会を舞台に、まさに“喰うか、喰われるか”の状況を描いた息詰まるクライム・サスペンス『ドッグ・イート・ドッグ』。原作はクエンティン・タランティーノも絶賛した、エドワード・バンカーの同名小説(ハヤカワ文庫NV)。『レザボア・ドックス』の“ミスター・ブルー”役など、クセ者俳優としても活躍していた彼のハードボイルド小説を、新鋭脚本家マット・ワイルダーが現代風にアレンジ。テンポのいいセリフ回しが笑いを誘う。
 まさに、崖っぷちなアンチヒーローの主人公・トロイを演じるのは、『リービング・ラスベガス』でアカデミー賞主演男優賞を受賞し、演技派俳優としての地位を確立すると同時に、『ナショナル・トレジャー』『ゴーストライダー』シリーズなど、数々のアクション大作にも出演しているニコラス・ケイジ。また、キレたら止まらないマッド・ドッグを演じるのは、オスカー助演男優賞候補となった『プラトーン』のほか、『処刑人』『ジョン・ウィック』の超個性派ウィレム・デフォー。そして、巨漢のディーゼルを演じる「ウォーキングデッド」『ビリー・リンの永遠の一日』などで注目を浴びるクリストファー・マシュー・クックが加わった、史上最凶トリオが“死か?勝利か?”の一世一代の賭けに出る!
監督は『アメリカン・ジゴロ』『キャット・ピープル』で知られるポール・シュレイダー。『タクシードライバー』『レイジング・ブル』の名脚本家としても知られる彼だが、『ラスト・リベンジ』に続き、ケイジと2度目のコラボとなる本作では、監督自身も物語のキーパーソンとなるギャングの首領・エル・グリコを好演。第69回(2016年)カンヌ国際映画祭の「監督週間」部門ではクロージング上映され、ブッ飛んだトリップ映像とともに、容赦ないバイオレンス描写が観る者のド肝を抜いた。 そんな泣く子も黙る衝撃作が、ついに日本上陸する!
 警官にハメられ、コカイン所持で逮捕。さらに、法廷から脱走未遂で10年以上の実刑を食らっていた、トロイ(ニコラス・ケイジ)。ようやくシャバに出てきた彼を迎えたのは、ひと足先に出所していた仲間だった。誰もが手を焼くキレやすい性格で、3日前に居候していた女と娘を惨殺したばかりのコカイン中毒者、マット・ドッグ(ウィレム・デフォー)。そして、余計なモメ事は起こさない温和な性格だが、キレたら怖い巨漢の取り立て屋、ディーゼル(クリストファー・マシュー・クック)。
 クリーブランドのストリップ・バーで再会を果たした3人だったが、正直な話、未来は決して明るくない。そこで、仲間思いのトロイは、金回りを良くすべく昔のムショ仲間の“通称・ギリシャ人”と呼ばれる、地元ギャングの首領・エル・グレコ(ポール・シュレイダー)に相談に行く。彼の指示に従い、警官に変装した3人は、金回りがいいと噂の麻薬密売人・クリーブランドの猿こと、“ムーンマン”(オマール・ドーシー)を襲撃。コカインと9000ドルを手に入れることに成功し、それを元手にカジノに向かった3人だったが、たった一晩で女と酒に消えてしまった……。
  ふたたび“ギリシャ人”に相談に行ったトロイは、マイク・ブレナンという男の話を聞く。彼に貸した4000万ドルを回収したいチェペ(レイ・ガレゴス)は、一歳になるブレナンの息子誘拐を計画。身代金の報酬として、トロイたちは50万ドル+ボーナス25万ドル、計75万ドルを手に入れられるというのだ。とはいえ、カリフォルニア州の“三振(スリーストライクス)法”により、今度逮捕されれば、終身刑になるマッド・ドッグは気が進まない様子。だが、3人は一世一代の大きな賭けに出るのだった。

 チェペの話によると、ブレナンの女とベビーシッターだけの話だったが、深夜のブレナン邸に潜入したトロイたちの前に、メキシコ系の男が現れる。

焦ったマッド・ドッグは、思わずショットガンで男を殺害。男が持っていたIDに書かれた名前は、ホセ・バスケスだったが、家を飛び出し、遺体処理をマット・ドッグとディーゼルに任せたトロイは、“ギリシャ人”から衝撃の真実を聞く。ホセこそが、身代金の払い手であるブレナンだったのだ!

 一方、遺体処理をするマッド・ドッグをディーゼルが殺害。ひと芝居打って、トロイと合流するディーゼルだったが、立ち寄ったスーパーマーケットで警官に気づかれ、激しい銃撃戦と化してしまう。
 まさに“喰うか、喰われるか”の状況のなか、果たして、生き残るのは誰だ!?

『ドッグ・イート・ドッグ』を引っ提げて、カンヌ(国際映画祭)に戻ってこられるなんて、夢が叶ったよ!  ニコラス・ケイジと私は『ラスト・リベンジ』のファイナルカット(最終編集)権をめぐって、かなりフラストレーションが溜まる経験をしたんだ。だから、お互いにもう一度、一緒に仕事がしたいと考えていた。私は彼に「もし、お互い生きていたら、また一緒に映画を撮るべきだ。でも、次はファイナルカットの権限は必ず守って、僕たちが作りたい作品を作ろう!」って言ったんだ。彼の返事は「もちろん!」だったよ。

 しばらくして、プロデューサーのマーク・バーマンが『ドッグ・イート・ドッグ』の企画を持ってきたが、私は「これだ!」と思った。当初、ケイジはマッド・ドッグ役が合っていると思った。でも、ケイジが脚本を読んでから、トロイ役の方がハマると分かったんだ。そこで、マッド・ドッグ役には、私の親友であるウィレム・デフォーに依頼したんだ。

 でも、重要なことは「エドワード・バンカーの原作をどうやって現代によみがえらせるか?」ことだった。バンカーの感性は、1970年代に作り出されたものだからだ。本作の時代設定は現代なので、「さぁ、どうしよう?」と思ったが、脚本家のマット・ワイルダーは、それを見事にやってのけてくれた。ちなみに、トロイが話すハンフリー・ボガードのくだりは当初、ワイルダーが描いた脚本にはなかったんだ。あれは撮影中に、ケイジが自分で考え出したものなんだよ。

 そして、私はバンカーのノワールテイスト溢れるストーリーにエネルギーを注ぎ込むため、あえて若いスタッフを集めてクリエイティブチームを作った。撮影部、美術部、衣裳部、編集、アソシエイト・プロデューサー、作曲家……各部署のトップのスタッフは、初めて独り立ちする作品だった。彼らは言うならば、ポスト・ルール世代。つまりルールを破りたくない世代で、ルールがあるなんてことさえ知らないんだよ。そこで、私は彼らに言ったんだ。「この映画には大手スタジオで作るような予算はない。それは、残念な知らせかもしれない。でも、良い知らせは、自由にこの映画を作っていいってことだ。だから、私を大いに驚かしてほしい。唯一禁止することは、つまらないことをすることだ」ってね。

 とにかく、この作品は自由に撮ることができた。「こうやってみよう! ああやってみよう!」ってね。これこそ、つまらない映画を作らないための“自由”なんだ。制作スケジュールは、効率的なものだった。これは新しい映画製作の時代ならではだね。ロケ地をロサンゼルスからクリーブランドに変更したことで、税金分を節約することもできた。そのおかげで、これまで見落とされてきたダイナミックな都市の魅力を十分に活かすことができたし、常にリラックスして、制作に取り組むことができたんだ。

 正直な話、自分でエル・グレコを演じる気は、まったくなかった。プリプロダクションの段階で、マイケル・ダグラス、クエンティン・タランティーノ、マーティン・スコセッシ、ニック・ノルティ、クリストファー・ウォーケン、ジェフ・ゴールドブラム、マイケル・ウィンコット、ルパート・エヴェレットらに、このクリーブランドのトランスジェンダーのギャングを演じないかと声を掛けたが、さまざまな理由で実現しなかった。そこで、「演技は決して巧くないが…私なら、少なくとも面白くは演じられる!」と思った。私が演じれば、ギャラを払うこともないからね(笑)。

1964年1月7日生まれ。アメリカ・カリフォルニア州出身。フランシス・コッポラを叔父にもつ名門出身。デビュー作は『初体験/リッジモント・ハイ』(82)。ゴールデン・グローブ賞最優秀主演男優賞にノミネートされた『月の輝く夜に』(87)や『赤ちゃん泥棒』(87)での演技が高く評価され、カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作『ワイルド・アット・ハート』(91)の主演を務めた。アルコール依存症の男を演じた『リービング・ラスベガス』(95)でアカデミー主演男優賞、ゴールデン・グローブ賞最優秀、ニューヨーク・ロサンゼルス・シカゴ映画批評家協会賞及び全米映画批評会議賞の最優秀主演男優賞を受賞し、名実ともにハリウッドを代表するスターとなった。その後も『ザ・ロック』(96)、『フェイス/オフ』(97)、『コン・エアー』(97)といったアクション大作などでも活躍。主な出演作は『60セカンズ』(00)、『天使のくれた時間』(01)、『アダプテーション』(02)、『ナショナル・トレジャー』(04)、『ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記』(07)、『ゴーストライダー』(07)、『キック・アス』(10)、『ゴーストライダー2』(12)、『スノーデン』(16)ほか。02年には『SONNY ソニー』で初監督も果たした。

1955年7月22日生まれ。アメリカ・ウィスコンシン出身。長編映画デビューは『ラブレス』(83・未)で、オリバー・ストーン監督の『プラトーン』(86)でアカデミー賞最優秀助演男優賞にノミネート。さらに、『最後の誘惑』(86)や『7月4日に生まれて』(89)で、その演技力や独特の個性が認められる。その後も『スピード2』(97)『スパイダーマン』シリーズ(02-07)に出演するほか、『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』(00)でもアカデミー賞最優秀助演男優賞にノミネート。そのほか、スパイク・リー監督『インサイド・マン』(06)、ジュリアン・シュナーベル監督『バスキア』(96)、デヴィッド・クローネンバーグ監督『イグジステンズ』(99)、アベル・フェラーラ監督『4.44地球最後の日』(11)、デヴィッド・リンチ監督『ワイルド・アット・ハート』(90)、ヴェルナー・ヘルツォーク監督『狂気の行方』(09未)、ラース・フォン・トリアー監督『マンダレイ』(05)『アンチクライスト』(09)『ニンフォマニアックVol.1/Vol.2』(13)、ウェス・アンダーソン監督『グランド・ブダペスト・ホテル』(14)、チャン・イーモウ監督『グレートウォール』(17)など、個性あふれる監督の作品に出演している。

1972年9月18日生まれ。アメリカ・テキサス州出身。主な出演作:映画『大脱出』(13)、『2ガンズ』(13)、『ハリケーンアワー』(13)、『バッド・バディ 私と彼の暗殺デート』(15)、『ビリー・リンの永遠の一日』(16)、ドラマ「ウォーキングデッド」(14)、「アンダー・ザ・ドーム」(14)

1946年7月22日生まれ。アメリカ・ミシガン州出身。コロンビア大学、UCLAで映画を専攻し、小津安二郎やロベール・ブレッソン、カール・テオドア・ドライヤーなどの映画に傾倒。映画評論家として活動後、74年、高倉健主演の『ザ・ヤクザ』で脚本家デビュー。76年のマーティン・スコセッシ監督作『タクシードライバー』、ジョン・フリン監督作『ローリング・サンダー』で高い評価を得る。78年『ブルーカラー/怒りのはみだし労働者ども』で監督デビューし、『アメリカン・ジゴロ』(80)、『キャット・ピープル』(82)、『愛と栄光への日々』(87)などのヒット作を手掛ける。また、85年の三島由紀夫の生涯を描いた『ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』(日本未公開)では、カンヌ国際映画祭最優秀芸術貢献賞を受賞し、高い評価を得ている。近年の監督作には、『白い刻印』(97)、『人妻』(99)、『ボブ・クレイン 快楽を知ったTVスター』(02)、『ザ・ハリウッド』 (13年)、『ラスト・リベンジ』(14年)などがある。

1933年12月31日生まれ。アメリカ・カリフォルニア州出身。舞台の裏方だった父とコーラスガールだった母の間に生まれた。幼少時代に両親が離婚したため、彼は下宿屋や軍事学校や少年院といった環境に。17歳のとき、サン・クエンティンの刑務所で、史上最年少の被収容者となるが、そこで執筆活動を開始。後に映画化された作品は、ダスティン・ホフマン主演『ストレートタイム』(78)やウィレム・デフォー主演、スティーブ・ブシェミ監督の「アニマル・ファクトリー」(00)などがある。また「リトル・ボーイ・ブルー」「エドワード・バンカー自伝」など、彼の小説はフランス、イギリス、イタリア、スペイン、デンマーク、ブラジル、オーストラリア、日本で出版。前科や服役という実経験を生かし、小説家として成功した一人である。また、俳優としても、共同脚本でクレジットされた『暴走機関車』(85)のほか、30作近くに出演。主な出演作に“ミスター・ブルー”を演じた『レザボア・ドッグス』(92)のほか、『ロング・ライダーズ』(80)『デッドフォール』(89)『ロンゲスト・ヤード』(05)などがある。05年7月19日、71歳でこの世を去っている。